Barefacedの歴史
計画的にではなくむしろ偶然に生まれた、あるビジネスについてのお話。それは、偶然ではなくしっかりと設計された、とある製品から始まります。
DIY時代
2003年、市場にある既存のベースキャビネットに満足していなかった私は、(物理学的に可能な範囲内で)希望に添うキャビネットを設計すべく、自らの工学知識を活かすことを決意しました。2008年の初め、ほぼ独学で工学の第二課程を学んだ私は(これには恐らく第一課程以上に時間を費やしました。そのときはベースばかり弾いていたので!)、数えきれないほどの様々な設計を試した上で、のちのBig Oneとなるモデルの製作に着手したのです。私はこのプロセスをネットで、単に「僕の革新的な手作り品だよ」という感じで公開していたのですが、かなりの反響がありました。単品で買うと送料の方が高くつくような部品もあったので、個人用に必要な量より多めに部品を調達し、空いた時間に興味のある人向けにも少数ながらキャビネットを作ることにしました。
2008-2010:納屋の中の男
ああ、正確には納屋の中ではないですね。最初はガレージの中でした。そこで少数のキャビネットを製作したのです。それからその男は木工を外部の職人に任せるようになり、ガレージにはエンクロージャーが完成形で戻ってくるようになりました。ガレージはすぐにスペースが足りなくなったので、他の場所を探す必要がでてきました。その後、新製品を製作するにあたり、新たな職人チームを仲間に引き入れました。その後、仕上げを担当するパートタイムの人が1人加わり、ボスは昼間の仕事を辞め、Barefacedにフルタイムで関わることになりました。
2011:正式な事業所が誕生!
2011年までに状況がやや変わってきました。私達は最初の正式な事業所に引っ越し、例の古いガレージは塗装工房となりました。製品の幅はさらに拡がり、注文も増え、キャビネットは世界中に出荷されていくようになりました。初めてフルタイムの従業員を雇い入れる一方、パートの人には秋に辞めてもらいました。注文をさばくためにより大きな事業所に移ったちょうどその頃、ギリシャがヨーロッパ全体を不況に引きずり込もうとしていたのです。幸いにもそんなパニックは長くは続きませんでしたが。
自分自身のニーズに沿って設計したひとつのキャビネットが、いまや沢山のベーシストの音質、増幅、可搬性、そしてラウドネスに対する要求を満たす製品ラインアップとなったのです。私達は注意深く精密な設計をすることの重要性については一歩も譲らず、高品質な製品を安価に提供するために地元生産と直接販売にこだわりました。
2012:ミニミニ工場の誕生
2011年の末、私達はある結論に至りました。そのころ私達のキャビネットは決して高くないのに付加価値税の支払いを課せられるようになっており、また外装をできる限り完璧にするためにより多くの時間を割く必要が生じ、一方で増え続ける経費と物価変動(特にネオジム)にも悩まされ、そのような状況下で私達はもはや、木工をUK国内の職人に外注することはできなくなりました。製造をUK国内に戻すこと、およびすべての労働者が正当な報酬を得られるグローバル生産態勢を確立すること、それらの重要性は私が強く信じるところであり、それもあって極東地域に製造を委託することは選択肢にありませんでした。その代わりに私達は合板の切り出し用にCNC工作機を導入し、すべての製造工程を自社で行うことにしたのです。2012年にBarefacedのキャビネットをご購入くださった方からは、格好つけるなよ、と言われそうですね。なぜなら皆さんには、予定納期より何か月も長く、辛抱強くお待ちいただくことになってしまったのですから。
CNC工作機を導入してとてもよかったのは収益が改善したことですが(充実したカスタマーサービスを提供し、新製品を開発し、国内で製造して世界中に販売することで貿易収支をほんの少し改善させることを私達が期待されているとすれば、これはとても大事なのです)、お客様の目線に立った場合、設計の柔軟性が増したとことの方がより重要です。CNC導入前のキャビネットは、外観上は導入後のものと変わらないのですが、組み立て方の面では全く異なるのです。2012年にやっとの思いで完成した製品として’69erがありますが、これには私達(そして初期のオーナーさんたち)は本当にぞくぞくさせられます。往年のモデルより更に良いサウンドで、大きいキャビネットの割には恐ろしく軽くキュートなものとなりました。アンプやベース、ジャンルを問わずとても音楽的で、楽しく演奏できるのです。
2013:CNCのスピードアップとGeneration Three
2013年の初頭は、キャビネットの材料の切り出しと組み立てをスピードアップし(CNC工作機のアップグレードが効果あり!)、リーン生産方式に取り組んでいました。新しい設計に目途がつき、12XN550ドライバーの初回ロットが届いたあと、私達はGeneration Threeシリーズの出荷を開始しました。生産はどんどんスムーズに、効率的になっていったのですが、スペースが足りなくなり、2014年の初頭にはもっと広い事業所に移ることになります。
製品ヒストリー~
Compact(’08年冬)、Big One(’09年春)、Vintage(’09年春)、Midget(’09年夏)
Barefacedの最初のモデルは、2008年の冬が深まる時期にリリースしたCompactシリーズでした。これに続き2009年の春にはBig One、そしてVintageが仲間入りし(この頃には、製品の大半でシルバークロスのグリルを選択できるようになりました)、夏前には最初のMidgetが到着しました。その後、独自の二重密度合板の採用により更なる軽量化を図り、同時にプラスチック製のスタッキングコーナーから、金属製のコーナーとゴム脚に切り替えました(なおMidgetは始めから金属製コーナーとゴム脚でした。合板については、始めのうちは旧来のものを使用していましたが)。
組付けの改善~Super Twelve(’10年春)、Super Fifteen(’11年初冬)
強固さを増しつつ体積を減らせるような上手いやり方を見つけたことにより、内部の組付け方法が更に進化しました。2010年春発売のSuper Twelveはこの新しい組付け方法を採用し(その方法は最初にMidgetに適用され、その後Compactやその後のモデルにも用いられました)、Compactでは3rdバージョン、Midgetは2ndバージョンから採用しています。2010年の夏には、最新の小型アンプの驚くべきパワーと顕著な軽さに促される形で、小さな改訂を行いました。最新のアンプは、最大音量で鳴らすとキャビネットの天板が小刻みに震えるくらいのパワーがあり、聴感上は問題ないものの、アンプが動き回ってしまうのです。それも解決。CNC製作に切り替えた際、組付け方法を全く新しいものに変えたのです。私達のキャビネットはより強く、強固になりました。
ダンピングの改良
この時点で私達は内部ダンピングの4度目の設計を行っており、(低域をキープするために)ポートの共鳴を犠牲にすることなくバックウェーブを可能な限り減らすことにエネルギーを注いでいました(これは中域のパンチを最大限にしつつ高域を明瞭にするためです)。このアプローチは全く独特ですが、とても効果があるのです。2010年の中頃から2012年の初頭にかけては、組付けはバージョン3.0、ダンピング対策もバージョン3.0になっていました。そしてCNC工作機のおかげでそれぞれがバージョン4.0となり、ダンピングはメインパネルの多くのスポットで取り去られ、それにより音波の高速度・低圧力の部分に反応する中域のバウンスを弱めることができるようになりました(TL設計にもあるように)。
外装の改良
そのサウンドと同様に豪華なルックスとなるよう、外装の細部にも改善を続けています。例えばコーナーとキャビネットの角のアールを揃えたり、テクスチャー入りポリマー仕上げの強度と均一性を改善したり、またグリルの後ろやポートの中がエンクロージャの外と完全に同じ色調となるように塗装方法を変更したり、オプションのシルバークロスのグリルの外観を改善したり(今は白いパイピングを施してあります)、といったところです。クロス製のグリルは鉄製グリルのマウントと同じくCNC工作機で加工しており、重さを減らしつつ勘合と外観を改善しています。もしあなたがバンド練習のときに異常に小さな、あるいは軽いキャビネットを持って現れたら、ルックスが良ければ懐疑的にみられることもないでしょう。以前なら純粋な音色の力に頼るしかなかったんですがね!
生産完了品~第一および第二世代モデル
2011年の1月、すべての始まりとなったキャビネットの最後の1台を販売しました。そう、Big Oneです。それはいまだにすばらしい作品であり、ビッグでクリーンな音という点では並み居る競合相手をねじ伏せるだけの力作です。しかしながら今ではBig TwinやBig Babyといったシリーズで様々なサイズをラインナップしているので、Big Oneはお払い箱にしてもよくなりました。ありがとうBig One、きみはよくやった。きみとギグをするみんなが今後も末永く、そのファットネス、ラウドネス、そしてその軽さを楽しんでくれることを願うよ。そして2010年の夏には、15インチ 2発と可変ポートチューニング、初めてのシルバークロスグリルを備えたVintageシリーズも、その生産を終えました。Vintageシリーズの最後のモデルは、皮肉にも黒い鉄製グリルをもった非ビンテージなルックスだったのですが!Vintageの狙いは真空管アンプと組み合わせて使っていただくことにあったのですが、大半のユーザーはそのような使い方をしていなかったので、幅広なエンクロージャーは実際には意味がありませんでした。Vintageに代わるものとしては2種類、よく似たサウンドでより横幅が短く、奥行きは長く、高さが低く、頑丈さを増した15インチ2発モデルであるSuper Fifteenと、真空管アンプのユーザー向けには ’69erがありました。
2013年の9月には、第二世代モデルのすべて(Midget、Midget T、Compact、Super Twelve、Super Twelve T、Super Fifteen、Big Baby T、Big Twin T)を生産終了とし、先進的な第三世代モデルをスタートしました。第三世代以前のモデルで唯一残ったのは ’69erだけでした。
絶えることのない研究と開発
私達はベース用キャビネットの設計において、最初の製品をスタートした時から、その可能性を押し広げてきました。その試みは今後も続きますから、どうか目を離さないでくださいね!